2021年4月の記事一覧
第99回入学式 式辞 03.04.08
春の光はどこまでもまばゆく、生きとし生けるものすべてが躍動する新たな季節となりました。本日ここに、PTA副会長 田村 裕(たむら ひろし)様をご来賓に迎え、埼玉県立松山高等学校 第九十九回入学式を挙行できますことは、私たちにとりまして大きな喜びでございます。
学校を代表して、心から厚く感謝申し上げますとともに、ご多忙の中をご列席いただきました保護者の皆様に、心から御礼申し上げます。
ただ今、入学を許可いたしました三百十七名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんは、今日から、松高生の一員です。我々は、皆さんが来るのを待っていました。皆さんを歓迎します。本校は、「文武不岐」を建学の精神として、九十八年の歴史を築いてきました。これからは、皆さんの力によって、百年の、その先につながるさらにより良い伝統が積み重ねられていくことを願っています。
皆さんの高校生活の開始をここに宣言します。
この三年間で世の中のリーダーになる力を身につけてほしいと思います。東日本大震災の痛みが完全には癒えぬまま、新型コロナウイルスは地球規模の課題となっています。「新冷戦」とも言われる国際関係、環境問題、格差の拡大など、チャレンジに値する事柄はたくさんあります。将来、自分が置かれた場所で、リーダーシップを発揮し、自分と家族と周りの人の役に立つ、そういう人になってください。
そのため、本校では皆さんの持てる力を最大限に発揮してもらいます。楽をするために本校に入ったのではないはずです。「どうして、こんな大変なことをしなければならないのか」と、理不尽に思うこともあるでしょう。「できないかもしれない」と、不安になることもあるでしょう。気持ちをコントロールできずに勇気が持てないときには、安心して「不安です。怖いです。」と我々に言ってください。必ず支えます。
これから未知の世界に飛び込んでいこうとする皆さんに、エールを送ります。坂村真民(さかむら しんみん)という詩人の詩を紹介します。『鳥は飛ばねばならぬ』という詩です。心静かに、聞いてください。
人は生きねばならぬ
怒涛の海を飛びゆく鳥のように
混沌の世を生きねばならぬ
鳥は本能的に 暗黒を突破すれば 光明の島に着くことを知っている
そのように人も 一寸先は闇ではなく 光であることを知らねばならぬ
新しい年を迎えた日の朝 私に与えられた命題
鳥は飛ばねばならぬ
人は生きねばならぬ
私は、この詩の中に、『覚悟』という言葉を読み取りました。『覚悟』というと切羽詰まった悲壮な感じもありますが、決してそうではなく、これから先にある「光」を目指して飛んで行くんだという強い意志だと思います。新入生の皆さんにも「光」を目指してとびこんで行こうという強い意志を持ってもらいたいと思います。
その際、自分の可能性に関するリミッターを外してください。
もう一つ、皆さんに期待を込めて、話をします。わかりやすいたとえ話です。
インドやタイでは、ゾウ使いがいます。大きなゾウは、足を鎖につながれて、木の杭につながれています。決して、大きな木の杭ではありません。ゾウの力で引っ張れば、簡単に抜けてしまうそうです。 なぜ、逃げないのでしょうか?
小さい時から人間に飼われているゾウは、小さい時から、その小さな木の杭につながれています。もちろん、力が弱いので杭から逃げることができません。成長し、大人になっても、杭から逃げることはできないと思っているのです。そういう発想自体がないようです。やろうと思えば、簡単にできるはずなのに、そういうことを考えもしないということです。
みなさんは、どうですか? 部活動でも、進路でも、勉強でも、「できるはずがない」、「あれは、違う世界のことだから」ということはないですか? そういう発想自体持っていないということはありませんか?
よく見ると、簡単に抜ける杭かもしれません。抜けるかもしれない杭に縛られることなく、自分を見つめてほしいと思います。
やがて、この学校を去っていく千日後には、自分でも驚くほど大きく成長した姿になっていると思います。家族の深い愛情に対する最大の恩返しは、君たち一人一人が高校生活を充実させ、大きな志をもって本校を巣立つことであるという事を胆に銘じて下さい。
保護者の皆様にお祝いとお願いを申し上げます。
本日のお子様のご入学、誠におめでとうございます。そして、今までの子育てのご苦労に対して、改めて敬意を表します。
お子様は、本日から歴史と伝統ある松山高等学校の生徒となりました。この三年間は、青春の多感な時期であり、楽しみの多い反面、何かと心を悩まされることも多いかと存じます。学校では、教職員一同、勉学や部活動等の指導に全力を尽くして参りたいと存じます。しかし、指導の効果を最大に高めるためには、ご家庭と学校の連携と協力が何よりも大切です。皆様の温かいご支援とご協力を重ねてお願い申し上げます。
結びに、新入生の皆さんが、本校で大きく成長されることを心から願い、式辞といたします。
令和三年四月八日
埼玉県立松山高等学校長 菅野 義彦
令和3年度 前期始業式(体育館 2.3年生)
おはようございます。
3年生にとっては久しぶりに、また2年生には初めての、リモートではない式だと思います。できれば、こういう形を続けたいと思っています。しかし、新型コロナはまた拡大しています。体育祭や文化祭などの行事もできなくなる可能性もありますので、決して油断しないようにお願いします。
さて、私はこれから1年間、いろいろなたとえ話やエピソードをとおして、「こういう人間になって欲しい。こういうことを考えてほしい。」という話をします。「結局、校長はなにを言いたいのか」を考えながら、心静かに聞いてください。
今日は、ペンギンの話、ファーストペンギンという話をします。明治時代の実業家、五代友厚が言ったと、6年前のテレビの連続ドラマで有名になりました。野生のペンギンは群れで生活しています。特に子育ては陸上で行います。陸上の巣からエサである魚を取るために、海に向かってヨチヨチとかなりの距離を歩いていきます。ようやく海にたどり着いても、海に飛び込むのが怖いので、大きな岩の上で一つに固まりなかなか飛び込めません。海には、天敵のアシカ、シャチが潜んでいるかもしれないからです。でも、その中の勇気のある1羽が思い切って海に飛び込みます。すると、その後を追って、次々にペンギンたちは海に飛び込んでいきます。このことから、勇気をもって第一歩を踏み出す人、自らの進路を自らで開いていく人のことを「最初のペンギン、ファーストペンギン」と例えて言います。
もう、私が言いたいことの結論はわかったと思いますが、
でも、本当は違います。ある生物の先生に聞いた話ですが、ファーストペンギンは、勇気のあるペンギンではないのです。
やはり、ペンギンにとって、海の中は怖いんです。天敵のアシカやシャチが待ち受けていて、飛び込めば襲われてしまうかもしれません。とても怖いので、自ら一番最初には絶対にに飛び込みません。そんな気持ちを持ったペンギンたちが狭い岩場で押しあっているのです。そのうちに、誰かに押されたのか、自らバランスを崩したのか、その中の一羽が偶然、海に落ちます。それが合図となって、すべてのペンギンが海になだれ込んでいく、というのが本当のところだそうです。
だからこそ、皆さんにはファーストペンギンになってほしくないのです。特に3年生、自らの進路を選ぶときに、「誰かに言われたから」とか、「なんとなく」、「たまたま」で、自分の進路を決めてもらいたくないのです。たとえ誰かに背中を押されたとしても、最後の決断は、自分で、責任を持ってやってください。「責任」というのは、「覚悟」です。
海を前にしたペンギンと一緒で、先のことを考えると、漠然とした不安が多いと思います。でも、海の中にはおいしいエサがあります。本校を卒業した先には、嬉しいこともたくさんあります。「覚悟」をもって、自らの進路を選んでください。
2年生の部活動も、勉強も同じです。「誰かに押されたから」では、やらされているだけです。ファーストペンギンになることなく、「覚悟」をもって、取り組んでほしいと思います。
学校は、君たちを応援します。応援したくなる、そういう姿を続けてください。
以上です。