【校長室】令和3年度 冬季休業前全校集会(令和3年12月24日)
前期の「ファーストペンギンになるな」、「ニホンムラサキのように」に次いで、今日は、虫のたとえ話です。校長はたとえ話で結局何を言いたいのかを考えて、聞いてください。
代表的な虫であるアリですが、標準的なものは体重が0.004gです。地球上にアリは1京(兆の1万倍)いるそうです。すべてのアリの体重を合計すると400兆gとなります。それに比べて、すべての人間は67億人いるとして、60kg平均だと、やはり400兆gです。つまり、アリの全体重と人間の全体重はほぼ同じとなります。
同様に考えて、すべての昆虫の全体重とすべての哺乳類では、すべての昆虫の方が重いのだそうです。昆虫の種類は、分かっているだけで100万種。まだまだ新種が見つかっています。昆虫は、ほ乳類よりも繁栄していると言っても過言ではないかもしれません。
昆虫がこんなに繁栄した理由は大きく2つあると言われています。
●1つは、幼虫の時の姿から、サナギを経て、成虫になると、その姿を大きく変えること、すなわち「変態」です。昆虫の80%は完全変態です。変態するということは、幼虫と成虫が完全に分業することを意味します。幼虫は、エサの豊富なところで、食べることだけに専念し、確実に成長することだけを目標に生活します。体の構造も、口と消化器官のみを発達させ、その他の器官の発達を一切無視しています。
●もう1つは、変態の後に飛ぶ力を身につけたということです。地球上で一番最初に空を飛んだ生物は、昆虫だそうです。4億年前のことでした。現在、昆虫の99%は飛翔します。飛翔力を持つことによって、行動の在り方が劇的に変わります。生活圏を水平方向にも垂直方向にも、文字通り飛躍的に広げられるからです。その行動範囲も一気に広がります。遺伝的に離れた配偶者とも遭遇できるようになりました。遺伝的多様性を獲得することによって、結果的に100万種以上の昆虫を地球上に生み出すことにもなりました。飛翔力は、昆虫が地球上に繫栄できた大きな要因の一つです。
さて、私がどんなたとえ話をしたいかわかってくれた諸君もいると思いますが、この昆虫のライフサイクルを、高校生活に例えてみます。
●まずは1年生。幼虫です。ひたすらに大きくなることに専念するときです。例えばカブトムシでは、大きなカブトムシと小さなカブトムシがいます。この大きさの違いは、幼虫時代にどれくらい栄養をとれたかによって決まってきます。成虫になってからはほとんど大きさに変化はありません。ノコギリクワガタのオスでは、体の大きさだけではなくハサミの形さえ変わってしまいます。大きいノコギリクワガタのハサミはカーブを描きますが、小型のものは、まっすぐで貧弱です。
1年生の諸君は、本校の「文武不岐」を通して、大きく成長してください。まだあと3カ月もあります。そのためにも冬休みから、自学自習力を身につけてください。年末年始を除いては、自習室も使えます。
●次に2年生。サナギです。特に、今から3年生の6月くらいまでがサナギの季節だと思います。サナギは一見すると全く動かず、何もせずただ眠っているように見えます。しかし、さなぎのカプセルの中では、次に成虫になるための様々な器官を作っています。一切エサをとらず、幼虫時代に蓄えた栄養のみで乗り切ります。必死の思いで、自分の体の構造を作り変えています。
2年生の諸君は、幼い自分から、甘い自分から脱却してください。やがて成虫になり、雄々しく空に飛び立つ体になるために、目に見えない必死の努力を期待しています。
●そして3年生。諸君は、見事に完全変態を遂げ、立派な成虫になりました。どこまでも自分の意志で飛んでいける力強い羽も身につけました。少々の風や外からの圧力に負けない、外骨格を身につけています。そして、何よりも、一斉に飛び立つ仲間もいます。
あと3カ月です。自分の幼虫時代に蓄えた体力を信じ、サナギ時代に作り上げた羽を信じて、飛び立つ準備をしてください。最後の最後まで、羽に磨きをかけてください。年末年始を除き、自習室は開放します。
では、まずはメリークリスマス。 そして、良いお年を迎えてください。 以上です。