校長室より

松山高校の生徒の皆さんへ

 

 新型コロナウィルスの影響から、十分な教育活動ができず、大変心苦しく思っています。先生方もどのようにすればこの状況の中でも皆さんの成長を・活動をバックアップできるかを考えています。でも私たち教職員は、一日も早く生徒の皆さんと顔を合わせ、共に励み、共に悩み、共に汗をかきたい!と切に願っています。

 今それが許されない状況です。だからこそ今皆さんにお願いがあります。それは、「自らを磨き・鍛え、そして本質を見抜く力を養ってほしい」ということです。今の困難を乗り越えるために、そしてこれから出会う様々な課題を解決するためには、「何が一番大切な事なのか。何がそれを成立させているのか(理由・根拠は何か)。どうすれば解決または前進できるのか。どう優先順位をつければよいのか」などを冷静に客観的に構築する能力が必要だと思うのです。

 私は、日本史を教えることが多くありました。なぜ過去を学ぶのかという質問に、歴史は人間の思考・行動が作り上げたものだから、それらを学ぶことで人間、自分、社会、組織等を知る手掛かりになるとともに、未来を予測するための貴重なデータになると答えてきました。

 しかし、昨今の社会情勢・自然環境等を見ると、これまで私達が経験したことのない出来事が次から次へと現れてきて、過去が未来を予測するためのデータにならない場面が多く見受けられます。「今までは、こうやってきた」ということが通用しない、過去の成功体験が未来の成功のヒントとならないかもしれないのです。だからこそ、これまで行われてきたこと、自分がやってきたことをもう一度客観的に見直し、今起こっていることの分析と照らし合わせ、新たな発想を加え、未来を予測し、成功のための方法を見出さなくてはならないと思うのです。

 「なぜこのような状況になってしまったのか」。「今までこんなことはなかったのに、なんで!」という悔しさや嘆きたい気持ちになります。しかし、「なぜを解明して、解決に導こう!」という前向きな思いを持たなければならないのでしょう。とは言え、「言うは易く行うは難し」だということも重々承知しています。しかしながら、このような状況だからこそ、自分自身に言い続けることが必要なのだと思います。

 今、テレビも再放送が多いようですが、その中に「仁」という現代の医師が江戸時代にタイムスリップしてしまうというドラマがありました。私は、最初に放送された時のある場面のセリフが今でも記憶に残っています。それは、「泣いても一生、笑っても一生。ならば今生、泣くまいぞ」というものです。ドイツの諺にも「Die Lebensspanne ist dieselbe, ob man sie lachend oder weinend verbringt.」 すなわち「笑って暮らすも一生、泣いて暮らすも一生」というものがあるそうです。同じ時間を過ごすのなら笑って過ごせたらと思うのは当然です。ドラマの中では、西洋からもたらされたコレラという病・解明されていない病と闘う江戸の人たちが描かれていました。そこには、笑って生きることの難しさ、人の世の儚さや無常さ、それでもなお、笑って生きるために前向きで強い思いを持たなければならないというメッセージが発せられていたと記憶しています。

 松山高校で今この時を過ごす生徒の皆さん、今私達の前には厳しい状況が横たわっています。だからと言って、この時を無駄にせず、いやこんな時だからこそ、自分自身とじっくりと向き合い、どんな力を身に付けるべきか、どうすれば身に付くのかを考え、自らを磨き・鍛えてほしいと思います。そうすることで、様々な物事の本質に迫り、見抜き、分析し、解決のための方策を立て行動することができると思います。確かに、それはそれは大変厳しい要求であると思いますが、困難にも毅然と向き合い、折れることなく努力し続ける姿こそが、真の松高生の姿だと信じています。そして、それが必ず皆さんの未来の扉を開くことになると思います。 

「You'll be alright. You can get it over.」